私の冥界くだり#4「自我のとらわれから自由になる」

人生、昇るばかりでなく、自ら降りるべき時がある。

それが更年期という世代。

降りるのは自分の心の中。

そして人生の暗部。

その中からずっと見つけたかった自分だけの本当の光をすくい上げ、人生の後半を「私は私でよかった」と納得して生きるため。

私が更年期の世代に入ってから体験したことを5回の記事に分けて綴ります。

#1「冬至の夜に陰極まる」

#2「それでも闇は見たくない」

#3「私を落ち込ませろ!」

の続きです。

自分はバカではないと証明したかった

「バカな私なんて大嫌い」と気づいた私は、「じゃあ、これどうしたらいいの?」となりました。

今までだったら、「バカな自分を好きになる努力」をしたと思います。

しかし、闇と仲良しの私の体からは激しい言葉が突き上げてきます。

「嘘つくな!!!バカな自分なんてやっぱり嫌いだ!!」

腹の底から聴こえてきました。

闇にくだるということは、「闇を闇のままに見ること、体験すること」です。

自分が自分に嘘をつこうとしていたら絶対にできないのです。

もう丸裸になるしかない。

それは爽快でもあり、苦しくもある。

そして私は「バカな自分が大嫌いな自分」をそのままに自分の中に存在させることにしました。

すると、過去に自分がしてきたことのイタい面が浮き上がってきてしまいました。

私はある男性とのこじれた関係が長年続いていた時期があり、私自身がなかなか手放せなかったのです。

その理由が「自分の選択に間違いはないことを証明したかった」、つまり、「私は愚か(バカ)ではないことを証明しなければ気が済まなかっただけ」ということに気づいた時、天地がひっくり返るほどの衝撃を受けました。

愚かではないと証明しようとする愚かさに気づいてしまった・・・というわけです。

心底アホやな!と思いましたし、恥ずかしくなったし、もう本当に丸裸すぎて悶絶。

でも長年の便秘がなくなったかのようなスッキリ感もありました。

こうして、過去の自分の愚かさが走馬灯のように巡ってきては悶絶しながら、それをそのまま見届けることを繰り返していました。

ただ、闇に降りる時に気をつけた方がいいことがあります。

たくさん感じるネガティブな思いを「一歩離れたところから見届けている自分」を必ず意識することです。

闇と一体化してしまうと死にたいくらい辛いはずです。

それは完全に本来の自己を見失うということ。

「死ぬー!」と言いながらも、力みなぎっていたのは、「これが全てじゃない」とわかっていたからです。

闇の中で見つけた光

そんな風にして丸裸になった私ですが、ここまでくると「なぜそんなにまでして愚かさを避けるのか?」というのが普通に疑問・・・という感じになってきました。

だって、おかしいですよね。

自分がバカだからって死ぬわけじゃないのに、なぜそこまで反応するのか・・・

エニアグラムの本とにらめっこしたり、瞑想したり、思いがままに書き出したり、色々しているうちにひらめきました。

私のエネルギーは“愚かさを嫌がる時が一番大きい”と。

思い込みではあるものの、いやだ!死んでしまう!と思うくらいの恐怖が私の中から湧いてくる。

人はすごく幸せな時(ポジティブな時)には「もう死んでもいい〜」と思います。

一方、命を脅かす恐怖に直面した時(ネガティブな時)、力がみなぎり全力で戦うか逃げるかしようとします。

私にとって「愚かさ」とは、感じることで力がみなぎるものだった。

確かに、愚かさから逃げようとして、たくさんの知識を吸収し、こんな不安定な自営業でも14年続けられるくらいまでになった。

つまり愚かさという闇(女性性)から、社会の中で受け入れられるために頑張る力(男性性)が生み出され続けていたのです。

私の生きる力は愚かさという恐怖だ。

そう気づいた時、闇は忌み嫌うものではなく、「生命力の源」に私の中で変わりました。

無力の中から出てきた「私にできること」

そうやって、闇の中から一つ一つ「ずっと出会いたかった本当の光」を見つけていきました。

2020年の終わり頃にはそれもひと段落。

それまでコンサルタントとしていろんなことを学ばせてもらった佐藤由美子先生のチームからも卒業し、2021年からコンサルタントとして完全に独立した形となりました。

エニアグラムをコンサルティングの土台にしたくて独立したので、自分で特別なメソッドを開発するとか、そういう意志は全くありませんでした。

ただ、心の闇の存在感が以前とはまったく違うものに変わったので、無力で愚かな自分をそのままに、ネガティブな想いもそのままに、どうにかしたい自分をそのままに・・・と、自分の内面に闇の居場所を作り続けていたのです。

そんな時、この取り組みって、結構わかりやすく手順として整理できるなぁとふと思い、書き出してみることにしました。

整理していくと、「もしかしてこれって、私以外の人がやってもおもしろいんじゃないのかな?」と思うようになったんです。

そして不思議なくらい、「だったらこれを読んでみたら?」と世界から言われているかのように、心の陰を迎え入れることや、内なる恐怖こそが生命力なのだということについて参考になる本やお話にたくさん出会い続けました。

モニターとして、何人かの方にこの手法でコンサルティングをして、ワークをしてもらったところ、意外な形で現実が変化したという報告が相次ぎました。

「パートナーがどうしたの?ってくらい急に優しくなった」という報告が一番多かったです。

パートナーがいる方の場合、わかりやすく内なる男性性を反映しているはず(男性なら、パートナーが内なる女性性を反映しているはず)ですので、それは頷けました。

次に、急にお金が入ってきたという報告が多かったのですが、これも今まで否定していた闇を「生命力(エネルギー)」として受け入れたなら、それも不思議はないと思います。

扱えるエネルギー量が増えるようなイメージです。

ですが、そのようなわかりやすい結果は、おまけのようなもので(結果は嬉しいけど、それだけを追求すると本末転倒になってしまうから)、私が何より大切にしたいのは、「内なる闇を大切に扱えるようになること」でした。

その意味でも手応えは大きく、2021年8月から正式にオリジナルの心理コンサルティングの提供を始めるに至りました。

#5へ続く

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この記事を書いた人

奥 敬子
心理コンサルタント
1972年神戸生まれ。
阪神大震災で被災したことをきっかけに上京し、ソニー・ミュージックアーティスツに入社
PUFFY、氣志團、真心ブラザーズなど、数々のアーティストのコンサートグッズ企画制作を11年間担当し日本全国をツアーで回る。
多忙の中でパニック症を発症したことをきっかけにホメオパシーに出会い、劇的に改善したことから専門家を目指すことに。
日本ホメオパシーの第一人者である由井寅子氏をはじめ、イギリス、インド、フランスなどホメオパシー先進国の教師の元で学ぶ。
2008年に開業し、ホメオパス医学協会の学会では4年連続ステージで事例発表。
ホメオパスとしての実績を積みながら2014年から心理コンサルタントとしても活動。
現在は心理コンサルティングの中に性格心理学のエニアグラム、ホメオパシー、タロットリーディングを取り入れて、ボディ・マインド・スピリットのつながりを太くしていくアプローチを行ない、アーティストや起業家、会社員、主婦など、多様な人々の人生を幅広くサポートしている。

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